2024年11月7日 | CATEGORY:代表大野ブログ , 調色屋
タカラ塗料の大野です。
調色(ちょうしょく)とは、色を混ぜ合わせて好みの色を作ることです。 塗料の原色は10種類以上あり、それらから最適な色を選び色見本とピッタリな色を作り上げます。 元の色と同じ色を作ることも可能ですし、全くこの世にない色も作り出すことができます。
日本塗料工業会(日塗工)が定める色というのがありまして、600色以上が記載されています。 これだけでも、ホームセンターに並んでいる色には比べものにならないほどの色があるわけですが、実は塗料を混ぜ合わせて作れ人間の色覚で識別できる色は100万色とも言われます。
それらの色を「調色屋」タカラ塗料では職人が毎日一色一色作っています。
2024年10月21日 | CATEGORY:代表大野ブログ , 調色屋 , 調色屋ラッカースプレー館
タカラ塗料の大野です。
前回のブログで古い日塗工と旧日塗工では同じマンセル値でも色が違う というお話を書きました。 今回はそれの続きです。
1987年M版のM20-344と2011年F版のF25-80Bとの比較です。 このように同じ5Y7/1でも色が違います。
原因にはそもそもマンセル値は絶対的な基準はないのがまずもっての問題です。
1メートルの長さを決めている基準
1メートルという長さは昔はメートル原器という白金とイリジウムの合金で基準が作られ、これを「1メートルとする!」と決められていました。 それが物質で作っちゃうと暑さ寒さで若干伸び縮みするし、人の手で作るから誤差もでるよね、となり、その後は「光が真空中で299,792,458分の1秒間に進んだ距離を1mとする」と決められたそうです。このように基準を作るのですが、ではマンセル値はどのように基準が作られるのでしょうか?
マンセル値であらわされる色の基準は?
もともとはMunsell Book of Colorsというので決められているそうなのですが、この世にあるすべての物が経年で変化しますし、機械の力で測るにもその技術の進歩や機器により色味は変わってしまい、色味には絶対的な基準というものはいまだに作れていません。 例えばN-95は真っ白を指すと決まっているんですが、その白をどの真っ白とするかということは、決めるのも難しいのです。 では理想的な真っ黄色も真っ赤も真っ青も基準が決められるものではなく、あくまで参考値という形になってしまいます。これらの理由から現在の見解では同じ表記であっても再現される色には幅があると考えるのが現実的です。
よって同じマンセル値でも色味の違いが出てくるのは当然のことです。 ですので日塗工の色見本帳には「マンセル値で(塗料を)発注しないようお願いします。」という表記があります。 現場ではもちろんマンセル値で注文される場合も多いのですが。。
日本塗料工業会が推奨する色の指定の方法
では日塗工はどのように色を指定して、と言っているかというと、 「有効期限の切れていない色見本帳で色を確認して、日塗工番号で注文して」 と言っています。 日塗工の色見本帳には2年という有効期限がありまして、それがすぎると保管状態により色味が変わってくる恐れがあるのでそう言っています。
なぜ旧日塗工と新日塗工で同じマンセル値でも色が変わってしまったか?の推測
さて話は旧番号と新番号に変わる境目のところでマンセル値が同じでも色が変わってしまった問題ですが、おそらく 「マンセル値を日塗工番号に反映することになったから、その際にちゃんと現状のマンセル値とあってるか確認してみよう」 となったのだと思います。 確認してみるとあら大変、旧日塗工に書いてあるマンセル値はちょっとずれてるやん!色表体系作ったら矛盾が起きそうやん!となったんだと思います。 旧日塗工色見本帳はトーン分類で分けられていたのですが、新日塗工色見本帳は色相でしっかりと分けて掲載していくことになったので、同じ紙で並べたら矛盾が生じてきたのです。
まったくの想像ですが当時様々な葛藤があったと思います。しかしそこで批判を覚悟で 「新日塗工色見本帳と旧日塗工色見本帳ではマンセル値が同じでも色味ががちょっとずれてもいいこととする」 と決定したのでしょう。
そうなると古い旧日塗工で塗られていたものを塗りなおさないといけないとき、旧日塗工番号で注文されても日塗工番号の有効期限は2年という縛りがあるため、旧番号で注文されても困る!そして同じマンセル値で買われても困る!やむなし、 「旧番号に対応した新番号を公式に定めよう」 となり、その表が新日塗工番号になったあとの版にも掲載されることになりました。
T版の旧番号対応表 色の関連というところでどれだけ色が近いかを書いている
そしてしばらくマンセル値にもいちいち「近似」と書くことにして、古い色見本帳とマンセル値一緒やのに色が違うやん!という批判も避けたのでした。
話は長くなりましたがこれが調色屋のサイトに乗っている旧番号の秘密です。
新番号の後に「旧番号344」と書いているのは「旧番号の344が欲しかったら新番号のこの色が一番近いよ」という意味なのです。
ちなみにですが1993年の発行版にて廃止された旧番号ですが未だに塗料業界の現場ではこの番号での注文は行わています。 ただどの会社も同じだと思いますが、これらの色見本帳はかなり希少になってきていまして、タカラ塗料でもよく出る色は独自に基準板を作ったりしています。
ながくなりましたが「日塗工番号と旧日塗工番号ではマンセル値が違う??」でした。
2024年10月18日 | CATEGORY:Q&A , 代表大野ブログ , 調色屋 , 調色屋ラッカースプレー館
タカラ塗料の大野です。 今回は日塗工番号の古さによりマンセル値が違ってくる?のお話を書きます。マニアックです。
まず日塗工番号とは日本塗料工業会が出している色見本帳に掲載されている番号です。
現行の日塗工番号
このKの部分は発行年度を表します。それ以下のアルファベットや数字はマンセル値を表します。 ということは日塗工番号=マンセル値、ということになります。
旧日塗工番号とは?
そして難しいのは、これらは現行の日塗工番号で、古い日塗工番号というものが存在します。 それは1993年発行のS版以前の版に掲載されている番号です。上記のようにマンセル値から作った番号ではなく通し番号のような番号です。 ただ一応100の位以上が色相を表しています。
さてさらにややこしいのはここからです。
どちらの版の色見本帳にも「マンセル値」が載っているのですが、同じマンセル値でもそれぞれの色が違うことがあるのです。
同じマンセル値でも色が違う??
旧版と新版でマンセル値が同じなのに色が違うことは多々あります。 たとえばこちら
1987年M版のM20-344と2011年F版のF25-80Bとの比較です。
ちょっと光っててわかりにくいですが、同じマンセル値でも344のほうがやや黄色っぽく明るいイメージです。
なぜこんなことになってしまっているのでしょうか??
つづきます。。