賃貸住宅でも原状回復可能な塗装下地材・ペインタブルテープの誕生秘話
2023年11月13日 | CATEGORY:item
壁紙を変えたいと思っている方は多くいらっしゃると思います。「壁紙の汚れが気になる」「おしゃれな部屋にしたい」「好きな色の壁紙に変えたい」などお悩みはそれぞれです。
当店では壁紙を張り替えるより手軽な、好きな色のペンキで塗り替えるという方法をお勧めしています。ただ、ペンキで塗り替えるという方法の難点は、「賃貸住宅では不可能」という点です。原状回復が必須な賃貸物件の壁紙をペンキで塗り替えるなんて、もっての外ですよね。
どういう方法だったら賃貸住宅の壁紙をペンキで塗り替えて自分好みの空間にすることができるのか、長年の課題でした。
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材の誕生
賃貸物件の壁紙でもペンキで塗り替えるという長年の課題を乗り越え、原状回復可能な塗装下地用マスキングテープ「ペインタブルテープ」が誕生しました。
ペインタブルテープを壁紙に貼ってから塗装。退去時にはテープを剥がすだけであっという間に原状回復ができます。
<①ペインタブルテープを貼る>
<②塗装する>
<剥がすだけで原状回復OK>
建築塗装用のマスキングテープが元になっているため下地に塗料が滲むことはなく、また、剥がす際に下地を傷つける心配もありません。
賃貸住まいの方はもちろん、賃貸店舗の施工、原状回復が必要なイベント装飾での使用など、様々な用途で使えるとあってご好評いただいています。
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材・開発のきっかけ
誰もが思いつきそうだけど今まで存在しなかった、塗装下地用マスキングテープ・ペインタブルテープ。その開発のきっかけは「幅の広いマスキングテープを壁に貼って塗装したら賃貸でもOKなのでは?」という当店代表の発想からでした。
当店では社内研修や社屋の修繕などの塗装の際にマスキングテープを常用しているので、マスキングテープに塗料が染み込まないということや、剥がすときに下地を傷つけないということはよく知っています。
壁全面にマスキングテープを貼ってから塗装したら下地の壁紙にペンキが付くことはないし、引っ越すときはテープごと剥がすだけで原状回復ができる…確かにこの方法だったら賃貸住宅の壁紙でもペンキを塗ることが出来そうです。
「貼ってはがせる」塗装下地用の壁紙は他社でも販売しているようですが、マスキングテープと違って厚さが分厚くて貼るのが大変だったり、平米単価が高くてコスト高だったりします。わざわざそれを貼ってからさらに養生(塗らないところを保護すること)して塗装するなんて一般に流通するだろうか、というのが正直な印象でした。
その点マスキングテープは厚さが0.1mmという製品特性上、扱いやすいということがメリットとして挙げられます。また、マスキングテープはもともと幅が広い状態で生産した後、それぞれの商品サイズにカットして販売しているということから、カットせずに幅の広いまま商品にすれば生産コストもそんなにかからないのではないか(=販売価格が抑えられるのではないか)、という算段がありました。
ある時にマスキングテープ製造・販売大手のカモ井加工紙(株)様とお仕事をする機会があり、その際に「塗装下地用に幅の広いマスキングテープを作ることができるか」と相談しました。
カモ井加工紙のご担当者としてもその発想は今までなかったようですが、「マスキングテープは塗装したら最後は剥がすもの」という意識があるようで、原状回復できる塗装方法という点に興味を持っていただき共同開発することになりました。
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材・試作してトライ&エラーを繰り返す
まずは、カモ井加工紙様で販売している商品の中から適切と思われるものをいくつかご用意いただきました。
「マスキングテープ」と一言にいっても種類が様々あり、使用用途によって粘着力が変わってきます。粘着力が強すぎてテープを引っぱり出しにくかったり、逆に粘着力が弱すぎてすぐに剥がれてきてしまったりと、簡単には適切なものが見つかりませんでした。
テープの幅も色々と試してみました。幅が狭いと作業効率が良くないですし、幅が広すぎると扱いづらく貼るときにシワが寄ってしまうということも実際に使ってみてわかりました。
そこで、カモ井加工紙様にもともとある商品ではなく、新たに「塗装下地用」に適切な粘着力と幅を考慮したマスキングテープを作っていただきました。目指したのは「女性が一人でも手軽に貼ることができる」商品です。
扱いやすい幅を考慮した30cm幅と、入隅などの細かいところ用に10cm幅の2種類。粘着力は、引っぱり出しやすく且つ適切な密着性を保てるもの。
以上の条件を満たす試作品が完成し、早速使ってみました。
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材・使用実験をしてみる
塗装するのは当店代表のお知り合いの方の賃貸事務所です。経年劣化で黄ばみがひどい壁紙をどうにかしたいけれど賃貸だから諦めていた、とのこと。当店が塗装下地用の幅広マステを開発しているという話を聞きつけ、「うちに来てやってみて」ということで塗装が実現しました。
内装工事の業者さんが見学に来られていたので、一緒に作業していただきました。
経年劣化がひどく、油汚れなどが付着している可能性もあったため、中性洗剤で拭き取りをしてからテープを貼りました。
<扱いやすい30cm幅>
始めこそ空気が入らないようにするのに苦労したものの、慣れるまでにさほど時間はかかりませんでした。しかも、シワが寄ったとしても簡単に貼り直しができるのであまりストレスは感じません。30cm幅はちょうどいいなと感じました。
また、ペインタブルテープの特長の一つとして、養生も兼ねているという点があります。上の写真を見ていただくと、床=塗らないところにまでテープを貼って保護しているのがおわかりいただけると思います。塗装してから不要なテープを切り取ればよいので、塗装下地用の壁紙を使うより圧倒的にラクです。
<入隅などの細かいところ用に10cmも試作>
壁の角の直角になっているところは10cm幅を使って、予め貼りやすい長さにカットしながら貼っていきました。短い幅で少しずつ貼っていくときれいに貼ることができるのがわかりました。
2.6m×4mの壁を2人で作業して一時間ほどで貼り終わりました。あとからどうせ塗装するのでまっすぐに上手に貼る必要はありません。とにかく壁紙が見えていなければどんな貼り方でもいいというのは、DIYの心理的ハードルが随分下がるなと感じました。
貼り終えたらいよいよ塗装。ローラーをコロコロ動かせばどんどん色が付いていくので、ペンキを塗るのはテープを貼るよりずっと簡単です。
二度塗りで完成。
テープが剥がれてくるようなことはなく、粘着力も適切でした。
テープの粘着力と幅は問題なかったんですが、気になるのはテープの色です。鮮やかな紫が目につきますし、ペンキの色によっては塗る回数を相当重ねないとテープの紫色が透けてきそうです。
粘着力と幅はこのままで、他の色を検討することになりました。
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材・いよいよ完成
紫のような鮮やかな色ではなく、白やグレーの無彩色で試作していただくよう、カモ井加工紙ご担当者にオーダーしました。
真っ白のテープは、白い壁紙に貼るとテープを貼っていることがわからないので却下。
グレーは薄い色から濃い色まで何色か作っていただきましたが、隠ぺい力(下地の色を隠すこと)を考えて、一番薄いグレーを採用することに決定しました。
建築塗装用のマスキングテープというと鮮やかなものが基本ということもあり、このグレーは完全オリジナルの、ペインタブルテープだけの色になります。
このようにいくつもの試作と実験を重ねて、ついにペインタブルテープが完成しました!
賃貸物件の壁紙にもペンキが塗れる下地材・塗装事例のご紹介
前述した通り、ペインタブルテープは賃貸住宅の他にも色々な使用用途ができます。
塗装事例をいくつかご紹介します。
▼賃貸住宅の寝室の壁紙を塗装した事例▼
BEFORE
AFTER
▼古民家の天井と壁を塗装した事例▼
BEFORE
AFTER
▼お寺の塀に塗装した事例▼
▼中津アートフェスティバルの壁画の事例▼
ご紹介した事例は様々な理由で「原状回復をしなければならない」場所です。でも、ペインタブルテープを使うことで手軽にペイントを楽しむことができるようになりました。
ペイントの世界や可能性がすごく広がったなと実感しています。
賃貸だからDIYできないと諦める前に、ぜひペインタブルテープを使ってみてください!